Challenge

#30 香ばしくて噛みしめるほどに甘い。
大袖振豆もちの「豆」のひみつ

サクッとした軽い食感と、もち米の芳醇な香り、音更大袖振大豆の甘みと香ばしさを堪能できる「大袖振豆もち」。豆の入った米菓は数あれど「大袖振豆もち」ほどに豆の味わいに特長のあるおかきは多くありません。実は「大袖振豆もち」で使用している大豆のほとんどが北海道音更町(おとふけちょう)で栽培している特別な音更大袖振大豆。栽培に手間暇がかかるため、市場にはあまり出回っておらず、岩塚製菓が音更町の農協や農家の皆様にお願いをして生産にご協力いただいているものなのです。

岩塚製菓が音更町の音更大袖振大豆にこだわる理由と、音更大袖振大豆が美味しい理由を紹介します。

内陸性気候のなかで育つ、音更町の大豆

▲ 丘陵地帯に広がる大豆畑

音更大袖振大豆が育つ音更は十勝平野の中心部に位置する町。北方には大雪山系の山々があります。広い空と大地がどこまでも広がる地域には、雄大な景色が広がっています。気候は日本には珍しく内陸性で、寒暖差が激しく、7~8月には多くの日が夏日となるものの、冬はマイナス10度以下まで冷え込み、マイナス20度を下回る日もあります。

十勝地方では火山灰によってできた水はけのよい土でさまざまな作物が育てられています。開墾当初は痩せた土地でしたが、人々の努力があり日本有数の農業地帯となりました。現代の農家さんの多くは堆肥や緑肥などの有機肥料を取り入れ、大切な土地を長く使い続けられるよう工夫を施しています。

十勝地方において大豆は主要な作物の一つ。音更町やその周辺地域では需要や畑の特性にあわせて、ユキホマレやユキホマレR、ユキシズカやそして音更大袖振大豆などを育てています。

イソフラボンとルテインが豊富な音更町の音更大袖振大豆

▲ 収穫したての音更大袖振大豆

品質がよく日本国内を中心に人気の高い音更町の大豆ですが、町名を冠した音更大袖振大豆はなかでも特別な品種です。令和4年度北海道大学と音更町と音更町農業協同組合との共同研究結果より、ショ糖を多く含むため他の国産大豆よりも甘みが強いことがわかりました。イソフラボンは他品種の2倍(※1)、ルテインは3倍(※2)も含まれており、成分が随分と異なることがわかっています。さらに健康面で注目されるサポニンのうち渋みのないソヤサポゲノールBも豊富。もちろん、一般的な大豆と同様にタンパク質や食物繊維、ミネラルも含まれているので、美味しいだけでなく栄養価の非常に高い食だといえます。
音更大袖振大豆を使うと甘く香り高い豆腐が作れるため、東京の高級料亭でも使用されています。

※1…ユキシズカ、ユキホマレRに比べ
※2…ユキホマレRに比べ

令和4年度北海道大学と音更町と音更町農業協同組合との共同研究結果

イソフラボンとルテインの役割

イソフラボンには骨粗鬆症や更年期障害の予防・軽減に効果があると認められています。またコレステロールや中性脂肪を低下させる抗酸化作用や、発がん抑制作用も期待されています。
ルテインは目を守る働きがあるほか、白内障の予防・改善に効果があることがわかっています。

効率的に収量を増やせない、大袖振大豆

美味しく栄養価の高い大豆でありながら、音更大袖振大豆の生産量は決して多くありません。音更町での作付面積は236ha(2023年の実績)と、ユキホマレ/ユキホマレRのわずか10分の1程度しかないのです。

なぜなら、栽培するのに非常に手間がかかるからです。音更大袖振大豆は1950年頃に音更町の農家・川本豊一氏が在来種の青大豆に改良に改良を重ねて開発しました。味と香りがよく、大粒で冷害に強い大豆を一つひとつ選抜して栽培することで新しい品種として確立させていったのです。
やがて音更大袖振大豆は一大ブランドとして町の名産品になりますが、その後、農業の機械化が進み大量生産には向かない品種として捉えられるようになります。
昨今、大豆は大型のコンバインを用いて収穫しますが、音更大袖振大豆は草丈の低い位置に豆が実るため機械での収穫がしづらいのです。また音更大袖振大豆は他の品種よりも倒伏しやすいため、1株ずつ間隔を空けて栽培をする必要があります。そのため面積あたりの収量が少なくなりやすく、効率的な栽培ができません。

より育てやすく収量の多い大豆を求めて農家の方々は音更大袖振大豆の栽培量を減らしていきました。これにより、音更大袖振大豆は市場に出回る量が少なくなり、貴重な豆になっていったのです。

音更大袖振大豆は音更町にしかない?

音更町で開発された音更大袖振大豆は、どうやら他の地ではあまりうまく育たないようです。別の地域で栽培に挑戦した農家の方がいたようですが、あまり良い結果とはなりませんでした。音更大袖振大豆は音更町だけの特産品なのです。

「大豆を戻してください」。岩塚製菓に届いた消費者の声

農家の皆さんが手間暇をかけて育てているため、音更大袖振大豆は他の大豆に比べて仕入れ価格が高い傾向にあります。それでもなぜ岩塚製菓は音更大袖振大豆を使うことにこだわるのでしょう。理由は商品のクオリティを守るためです。

岩塚製菓は「豆もち」の商品を一度、音更大袖振大豆を使わず別の国産品で製造したことがありました。しかし味は異なるものとなり、消費者からも「大豆を前のものに戻してほしい」との声が多く届きました。
岩塚製菓の「豆もち」には音更大袖振大豆しかない——。
岩塚製菓は市場に出回りにくくなった音更大袖振大豆を使い続ける決心をします。

どうしても音更大袖振大豆を使いたい岩塚製菓は、音更町の農業協同組合に音更大袖振大豆の供給を直接依頼しました。理由を知った農業協同組合から地域の農家の方々に状況を説明してもらい、継続的に音更大袖振大豆を生産していただけるようになりました。
2024年現在、音更大袖振大豆は岩塚製菓が全国で最も多く購入し、使用しています。
「農産物の加工品は原料より良いものはできない」と考える岩塚製菓は、お米はもちろんのこと、使用するあらゆる原材料にこれからもこだわり続けていきます。

美味しい音更大袖振大豆を高い技術で

岩塚製菓の「大袖振豆もち」は、手間をかけてしっかりと餅を練ることでおかきの中に細かな気泡ができ、さっくりとした軽い食感となるのです。そんな口溶けの良い生地のなかに香ばしく炒った音更大袖振大豆を混ぜ込むことで、2種の食感が楽しい、唯一無二の豆もちができあがります。品質に妥協しない岩塚製菓は、こだわりの原料を高い技術で加工することで、美味しい米菓を生み出しています。

これからも皆様に安全で美味しい米菓をお届けするために――。
岩塚製菓の取り組みは続いていきます。