Challenge

#26 究極のお米を求めて。
自然栽培米、8年目の取り組み

岩塚製菓では2017年から、農薬や除草剤はもちろんのこと、化学肥料も一切使用しない「自然栽培米」を作り続けています。
ごく限られた収量ではありますが、丹精込めて作られた自然栽培米は非常に甘みが強く、口にした人々を驚かせてきました。
年々難易度が上がると言われている自然栽培米の8年目の取り組みを紹介します。

米不足に立ち向かうために、高価値なお米を作る

岩塚製菓では自然栽培米の育成に、JAえちご中越、有限会社ファームリンクル、そして地元の農家の皆さんとともに協力し合いながら取り組んでいます。

2024年の田植えの際、JAえちご中越の丸山健司代表理事・専務は「現在、全国的に米不足が懸念されています。全国米穀販売事業共済共同組合の発表では、2020年から2040年にかけて米の消費は約4割低下することが試算されています。しかしそれ以上に、供給量が少なくなり、このままでは国産米だけで国内の消費を賄っていくことすらできなくなる可能性があります。高い価値を持つお米を作ることでこの状況を変えていき、米作りの現場を守り続けることが大切です。共に頑張っていきましょう」と話しました。

また岩塚製菓の小林晴仁常務取締役は、「岩塚製菓は『原材料よりもいいものはできない』という考えのもとこれまでずっと米菓作りを続けてきました。自然栽培米はその考え方を突き詰め、次のステップへ進んでいくための足がかりとなるものです。このような取り組みが8年目を迎えることができ、とてもうれしく思います。10年目が見えてきた今後は、若い世代にこのような取り組みを引き継いでいきたい」と述べました。

有限会社ファームリンクルの内藤章次代表は、自然栽培米の田んぼで見つけた「コオイムシ」を披露。「天神谷の自然栽培米の田んぼには、全国版レッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されている貴重な生物が息づき始めています。これは他の田んぼではまず見ることはできません」と貴重な環境が整いつつあることを示しました。

作るところから原料のお米を学ぶ

自然栽培米の田植えには、岩塚製菓の新入社員3名が参加。実際に田んぼに入り泥にまみれながら、岩塚製菓の精神を反映するような取り組みに挑戦しました。

Uターン就職の社員2名は、「十日町の農家出身なので田植えや田んぼには親しみがあります。東京の大学に進学しましたが、新潟の風土や田園風景が好きでこちらに戻ってきました。日本の原風景を守るような取り組みに関わることがうれしいです」「このような取り組みを通じて、岩塚製菓が地域を大事に思い、皆さんとともに発展していきたいと考えていることを知ってほしいです」とコメント。

中国・四川省の出身で美味しい米菓で国と国との文化をつなぎたいと入社した社員は、「四川省は小麦の生産地なので、水田自体を初めてみました。とても興味深く、これからどのように育っていくのか楽しみです」と驚きの声をあげていました。

雑草に負けない「ポット苗」を作付け

日本全国で年々夏の暑さが増してきている昨今、自然栽培米の作付けを行っている新潟県長岡市もまた例年酷暑に見舞われています。とくに2023年の猛暑と水不足はお米の品質を低下させ、出荷するお米の等級が下がってしまった田んぼが少なくありませんでした。

幸いにも、自然栽培米を育てている天神谷という地域は山から涼しい風が吹き込むことや冷えた湧き水を利用していることから影響は軽微でしたが、この先は影響が出ないとも限りません。

そこで、2024年は「ポット苗」と呼ばれる大きく成長させた状態の稲を植えることになりました。

左が通常の苗、右がポット苗

通常の稲よりもポットのなかで大きく成長した苗は、植えてから田んぼのなかに根を張るまでの日数が短く、早く育つことができます。そのため雑草に負けることなく成長し続けることができ、収量増につながると考えられているのです。自然栽培米には除草剤を使用しないため、斬新な解決策として今年初めて導入されました。

ポット苗は手植えもできますが、2024年は新たな試みとして手押しの電動田植え機によって作付けをすることになりました。田植えに挑戦した社員たちは、皆慣れない作業に苦戦しながらも楽しく取り組みました。

ポット苗は次のスタンダードになるか

JAえちご中越の丸山健司代表理事・専務によると、ポット苗は2年間の試験運用を経てようやく実践に漕ぎ着けることのできた特殊な栽培方法なのだそうです。ポット苗は一度植えればよく育つというメリットがある一方、植えるまでは小さなポットのなかで丁寧に育てなければならないため非常に手間がかかります。
「現在の技術では、すべての田んぼで適用できる方法ではないため、こだわりのお米を作るときにだけこの栽培方法を用いています。自然栽培米のように少量でもいいお米を作りたいときにはぴったりな選択肢ですね」と語ってくれました。

JAえちご中越は、さまざまな働きかけや工夫を凝らし、今後の農業の発展を支えていきたいと考えているようです。

自然栽培米の取り組みはメディアからも注目されており、この日も放送局や新聞社が多数取材に訪れました。

日本の農業を守り、美味しい米菓づくりへと続く取り組みを、岩塚製菓は今年も続けていきます。