Challenge

#22 未来の農業を担う
農業大学校の学生にききました。
「これからの農業に必要なことはなんですか?」

すべての商品に日本のお米を100%使用している岩塚製菓は、農家の皆さんとともに、地域の農業、環境、そして社会を守り育てていきたいと考えています。

高齢化や温暖化といった課題を抱え社会全体が大きな変化の中にある今、未来の農業を担う若者は何を考えているのでしょう。新潟県農業大学校の学生へヒアリングを実施し、未来の農業を考える機会を得ました。

ご参加いただいた学生の皆さん

左から
松原 和樹さん(自家就農予定)・佐瀬 世真さん(自家就農予定)・秋田 慧さん(自家就農予定)・阿部 慎吾さん(法人就業予定)・櫻井 明日華さん(法人就業予定)・伊藤 広貴さん(法人就業予定)

おせんべいの味は、おばあちゃんとの思い出

――はじめまして。みなさん今日はよろしくお願いします。まずうかがいたいのですが、皆さんは「岩塚製菓」のことをご存知でしょうか。

松原 「味しらべ」がよくおばあちゃんの家にあって食べていました。

佐瀬 同じく「岩塚の黒豆せんべい」がおばあちゃんの家にあってよく食べていました。

――おせんべいの味はおばあちゃんとの思い出に紐付けられているのですね。最近では「バンザイ山椒」や「バター餅」などSNSでも人気のある商品も続々出てきているので、ぜひ召し上がってみてください。

農業を志したきっかけも、おばあちゃんとの思い出

――皆さんが農業を志したきっかけは何だったのでしょうか。

櫻井 母が果樹園の仕事をしていて、その手伝いが楽しいと感じるようになったからです。美味しい梨をつくっているので、それをたくさんの人に広めたいなと思いました。まずは法人に就職予定ですが、いずれは実家に戻って母と果樹園を運営したいです。

伊藤 通っていた高校が農業高校で、そこで野菜づくりの楽しさを知りました。実家は稲作をしているのですが、規模的にそれを継いで生計を立てていくことは厳しいです。しかも米の消費が減っている現代では、稲作だけではなかなかやっていけないと思い、野菜の生産をしている法人に就業することにしました。

阿部 祖母の畑仕事を手伝っているうちに、野菜づくりの面白さに目覚めました。農業高校でも園芸を志したのですが人気のため入れなくて、最初は仕方なく稲作を学ぶことになったんです。けれどやってみると米づくりも楽しい。水の管理などは難しいですが、自分で作ったものを売りに行き、買って食べてくれた人が「美味しかったよ」と声をかけてくれるのはこのうえない喜びです。大学校では一人50aほどの田んぼを任され米づくりの実践をしています。管理する人の性格や方法によって、田んぼの状態などに差が出るのは面白いです。

秋田 私も祖母の農業を手伝ったことがきっかけです。稲や梨の栽培を手伝いました。大学校を卒業したら、祖母の田んぼを継ぐ予定です。家族はみんな喜んでくれて「やるならしっかりやれ」と応援してくれています。

松原 私は一度建設業の道に進んだのですが、あるとき祖父から、田んぼの跡継ぎがいないことを相談されて。稲作のことはまったく知らなかったのですが、自分がやるしかないと思いました。今は祖父や叔父の手伝いをしながら大学校でも稲作を学んでいます。自然を相手にする仕事は楽しく、やりがいも感じていますね。何より、自分で作ったお米を食べることは大きな喜びです。

佐瀬 実家が農家なのですが、兄が継ぐことになっていたので、自分は好きなことをしていいと言われていました。けれどコロナ禍のときにはすることもなかったので、家のことを手伝っていたんです。そうこうしているうちに、日本の農業のいろいろな課題が見えてきて。もともと小さいころから手伝っていた農業に自分も本格的に携わってみることで何かできることがあるのではないかと思い、この道に進むことにしました。

就農者が直面している、日本の農業の課題

――日本の農業にはどんな課題があると思いますか?

佐瀬 米の値段があがらないことに加えて、就農者が減っていることです。

阿部 肥料の価格が高騰していることも課題です。お米の価格に転嫁できればいいのですが、米の消費量が減っている昨今、なかなかそれもうまくいきません。解決策としては、ブランド米を育てることを考えています。農薬や化学肥料を使わず有機肥料のみで育てるお米です。選定基準がとても厳しく栽培は簡単ではないのですが、高く売れるので米の価格引き上げにはつながります。

秋田 肥料価格高騰の問題は、自分たちで堆肥をつくることでもある程度解消できるかもしれません。畜産農家から家畜の排泄物などをもらいうければ、エコサイクルができあがります。とくに果樹園には有効な手段と考えています。

松原 これは学校で教わったことそのままなのですが、就農者が少ない今は、省力化と大規模経営を進めることが大切です。今はトラクターも田植え機も人が操作をしていますが、この領域にも自動運転技術が入ってくれるととても効率的になると思います。

田畑は絶え間なく使われ続けなくてはならない

――農業を効率化するためには農地を集約しなくてはなりませんね。

松原 すでに祖父の家のまわりの田んぼを受託し、稲を栽培しています。

佐瀬 うちでも近所の人から「手伝ってほしい」と声をかけられ、自分の家の田畑以外も耕しています。

秋田 果樹園も似た状況です。意欲のある作り手のところにみんな果樹を預けて、栽培を委託するんです。農作業は高齢者には重労働ですから、若い作り手のところに土地や果樹が集まります。そういう状態を見ていると、自分の働きが必要とされていることがよくわかるんです。自然と地域に貢献したいって思いますね。

――預かり手がいない田んぼや果樹はどうなってしまうのですか?

秋田 適切な世話をしないと、果樹は2、3年で樹形を変え実をつけなくなってしまいます。だから引き継ぐときには時間を空けてはいけないんです。後継者問題はすぐそこに迫っているんですよ。とはいえ、ブドウのように植えて数年で収穫ができる果樹もあるので、一度荒れてしまった土地がまったく使えなくなるというわけではありません。

校長先生 田んぼについては私が説明します。田んぼの場合、休耕田になると雑草が茂りモグラやネズミが穴を開けて、保水力が低下してしまうなど、荒れ地となってしまいます。だいたい2、3年放置しておくと再び作付するのに大変な労力を要するようになります。農家はだいたい持っている土地のなかで一番いい土地を田んぼにするので、休耕田が増えるということは、それ以上にたくさんの土地が荒れていっていることになります。

阿部 地域の土地が荒れていくのは残念なことです。少しでも田んぼを守れるよう、私はまず法人で実力をつけてから、自分の田畑を持ちたいと考えています。

悪いイメージを払拭し、農業の本当の魅力を伝えたい

――農業を志す若い仲間を増やすにはどんなことが必要だと思いますか?

伊藤 農業自体は魅力的な仕事なので面白さを知ってもらえる機会が増えればいいと思います。田植えや稲刈りを体験してもらえれば、興味を持ってくれる人が増えるのではないのでしょうか。

阿部 農業のイメージを変えていくことが大切です。休みがないだとか給料が少ないと思われがちですが、現代では日曜休みにしているところも少なくありません。確かに、忙しい時期もありますがイメージほどではないと思います。特に冬場は土日とも休みにしてしまっている人も結構います。

伊藤 規模の大きな法人であれば、福利厚生も充実しているのであまり他の会社と働き方は変わらないかもしれないですね。

櫻井 農業は土にまみれて汚い、かっこよくない、というイメージも変えていくべきだと思います。実際には結構おしゃれを楽しめる職業ではあるんです。

秋田 一般的なイメージよりもずっと悪くないことを法人からも個人からも発信していけるといいですよね。

松原 小規模な農家では田植え機やトラクターといった機械を買うのに一苦労です。そのあたりの補助があれば、より新規参入はしやすくなると思います。

伊藤 機械購入のための補助は、本当にあるといいなと思いますね。

松原 農業って自然のなかに身を置いて働ける、現代では数少ない選ばれた職業だと思うんです。こんなに楽しいことって他にはあまりないんじゃないかな。こういう農家としての誇りももっと皆さんに伝えていけたらいいですね。

佐瀬 より一層儲かる農業を実践していくことも、農業を守り広げていくことには大切だと思います。

生産や販売方法を変えることで、農家がもっと豊かになるように

――農家がもっと豊かになるためのアイデアはありますか?

伊藤 もしも魔法のような技術があれば、一年中高価格帯で売れるブランド米を作りたいですね。農家は収穫の時期をずらすために早生・中生・晩生(わせ・なかて・おくて)にわけて米をつくるんですよ。早生は早い時期にとれるもの、中生がその次、シーズンの終わりにとれるものが晩生です。早生の品種と晩生の品種は異なり、また品種ごとに価格も違います。全シーズンを通して高価格帯で販売できるお米を作れるといいのですが。

秋田 生産方法だけでなく、販売方法にも工夫が必要だと考えています。市場に出荷するだけでなく、生産者が自ら売っていくことで作物の魅力をより細やかに伝えたい。品種だけでなく自分の農園のブランドを作っていくことも大事なのかなと考えています。まだ、現実の厳しさを知らないのでやってみたらとても難しいことなのかもしれませんが。

松原 私のところでは、大豆や小麦といった作物を育てはじめました。新しい生産の柱にできればと。
お米に関しては、美味しさを発信していくことが大事だと思っています。白米として食べるだけでなく、おこわやお餅、そしておせんべいといった加工品も含めてお米の魅力を発信していきたいです。

佐瀬 うちでは有機農法で酒米を育てたり、化学肥料や農薬を7割減らしてコシヒカリを栽培したりしています。酒米は主に海外輸出用。市と協力して販路を広げています。有機栽培の酒米は年々需要が増えており、売れ行きは好調です。
コシヒカリも県認証を受け、減農薬米を求めているお客様にお売りしています。化学肥料や農薬を使わないことは、雑草の処理などが本当に大変ですが、やりがいはあります。除草機を増やすなどして今後も続けていきたいです。

岩塚製菓はこれからも農家の皆様とともに、美味しいお米作りを続けられる米文化の明るい未来を描いていきます。