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#21 どうして自然栽培米を育てているの?

2023年で7年目を迎えた岩塚製菓の自然栽培米への取り組み。手間暇のかかるこのような農業をなぜ続けているのでしょうか。実施を決めた取締役の小林晴仁とアドバイスをした新潟大学人文社会科学系准教授の長尾誠信先生に聞きました。

きっかけは新潟大学大学院での講義

取締役の小林晴仁

岩塚製菓が稲の自然栽培に取り組むことになったきっかけは、小林が新潟大学大学院でMOT(Management of Technology,技術経営)について学んだことを事業に活かそうとしたためです。
長尾准教授が行ってきた講義のなかでCSRや企業のブランディングへの取り組みが解説されました。

「当社でももっと人や環境にやさしい取り組みができないかと考えていました。長尾准教授に相談したところ、同じ大学院の卒業生でエシカルな経営に精通している人がいるというので紹介をお願いし、その方に自然栽培米という農法があることを教わりました。」(小林)

自然栽培米を育てることは、岩塚製菓の創業者の言葉「原料よりいいものはできない」の思想に通じるものがあると考えた小林は、他県へ学びにいったり、有限会社ファームリンクルをはじめとした近隣農家と地元JAとの協働で事業に取り組むことを決め、事業を動かしはじめました。

自然栽培米がもたらす幅広い効果

新潟大学 人文社会科学系准教授 長尾誠信さん

そんな小林を豊富な知識でサポートしていたのが長尾准教授でした。

「企業がエシカルな活動に取り組もうとするときには、よくCSR(企業の社会的責任)の枠で実施されます。しかしCSRは一方的な概念であることが少なくなく、また『やらなければならない』という圧力を感じるためにポジティブな思いでは取り組みにくい。結果として、長く続かないことが多いです。それよりは、企業のブランディングやマーケティングにも役立つものと考えて取り組むのも良い方法でしょう。」(長尾准教授)

また、自然栽培米への取り組みは里山の保全にも役立ちます。これはすなわち環境保護だけでなく、地域にも貢献できるということ。環境を考え直すきっかけとなるだけでなく、幅広い効果を持つ取り組みになると考えられました。

自然栽培の大変さが「資産」となるとき

肥料を足さない自然栽培米は収量を増やすことが難しいだけでなく、除草剤を使えないために夏場の草取りが大変だったり、自然が豊かな地域で作られるために動物の被害を受けやすかったりと、苦労が絶えません。しかしながら、この苦労こそが資産になるという考え方もできます。

「今は世界中の人々が『経験』を求めて旅をしています。田植えや草取りといった農作業を体験したい、天神谷に遊びに行きたいという人もじきに出てくるでしょう。そのときに、自然栽培米を行っているこの地域は一大ブランドになり得ます。環境に優しくて、食物も美味しい。岩塚製菓と長岡のことをたくさんの人にいいイメージを持ったまま知ってもらうことができると思います。」(長尾教授)

実際に岩塚製菓の社員は田植えや草取りといった農作業を通じ、自然の恵みの素晴らしさや、お米のありがたさを肌で実感しています。お米を主原料として米菓を製造する企業の社員として大切な経験を積んでいっているといえるでしょう。

お米の本当の価値を知る

また自然栽培米は、岩塚製菓が本当に商品の美味しさにこだわっていることを表しているプロダクトでもあります。岩塚製菓が天神谷で育てた自然栽培米は小粒ながらも粘りと甘みの強いコシヒカリ。お米本来の美味しさを存分に感じられるお米です。

収量が少ないために市販できる量はわずかではありますが、このお米を通じて、岩塚製菓がお米の美味しさに本当にこだわっていることを皆様に知っていただき、それを体験として知ったいただく機会を創出しています。

現在、農林水産省では「みどりの食料システム戦略」をうちたて、2050年までに農地の25%を有機農業の農地へしていくことを掲げています。自然栽培は有機栽培よりもさらに一歩難易度の高い栽培方法であり、国が環境や健康への影響を考慮して進めていることからさらに進んだ取り組みでもあるのです。

「自然栽培米の田んぼは少しずつ拡大していっています。まずはこのお米を食べることで、お米本来の美味しさ、自然の豊かさを感じてほしい。岩塚製菓が美味しいお米を大切にしている企業だということを知ってほしいです」(小林)

岩塚製菓は「お米となかよし」な企業として、美味しいお米を作り続けられる環境や米文化を守ることに貢献していきます。